宮内 弘子
高山医院
院長
宮内 弘子
Miyauchi Hiroko
Doctor's Message

医は仁術。すなわち、医は算術ではなく、人命を救う博愛の道である

Career

帝京大学医学部医学科卒。同附属市原病院三内科(帝京大学ちば総合医療センター内科)、社会福祉法人慈生会病院(現医療法人財団健貢会総合東京病院)、医療法人京友会介護老人保健施設つくも苑、川崎市立多摩病院総合診療科、杏林大学医学部付属病院総合診療内科、稲城わかばクリニック、共済会櫻井病院在宅診療部を経て、2020年、高山医院院長に就任。日本内科学会認定内科医。

Story

総合診療科は地域医療の最初の窓口

私が医師として歩み始めた頃、医師・母親・主婦と全ての役割をこなさなければならず、悩みつつ進んでまいりました。医師としての仕事は、育児との両立を考えながらも試行錯誤で少しずつ積み重ねてきたものです。夫も高度救命救急センターで勤務しておりまして、子供がまだ小さい時分は私のフルタイムでの勤務が難しかったため、働き方をセーブしながら家庭と仕事のバランスを模索しておりました。

大学病院での研修医生活では主に消化器内科、後期研修は社会福祉法人の病院では循環器疾患を中心に指導して下さる上司に恵まれ幅広く内科疾患を診察してまいりました。その中で各科をたらい回しにされた患者さんから「一体この症状はどこに相談すればいいの?」というお声を何度もいただき苦慮した記憶がありました。

子供も小学生になり手がかからなくなったころ、学校近くの市立病院に赴任いたしました。特に地域医療に重点を置いた病院であり、当時の院長が家庭医療学会で要職を務められていて病院の総合診療科の部長であり、私は一から地域医療の大切さを教示いただきました。医療は病院だけで成り立つものではなく、かかりつけ医との連携が非常に大切なものであると痛感いたしました。その後伝手あって大学病院の総合診療科特任指導医としてお手伝いする機会がありました。大学病院は非常に専門性の高いところであります。内科でも呼吸器科、循環器科、消化器内科、神経内科、糖尿病・代謝科、腎臓内科、高齢診療科、総合診療内科と8つの専門科目に分かれます。例えば、高齢者の肺炎に関しても、心不全を起因とした肺水腫なのか、神経難病や脳血管障害による嚥下障害が原因の誤嚥性肺炎なのか、肺がんにより気管支が閉塞したことによる肺炎なのか、判別しないといけないため、専門性の高い病院では入院先の診療科が決まらないことが多くありました。私の勤務した総合診療科は他の診療所や病院との紹介や逆紹介に窓口であり大学病院の救命救急センターに設置されていました。専門科に当てはまらない原因不明の症状や複数の症状は、総合的に判断し適切な科に相談する必要があります。そういう点で周囲の科や他の医院との連携の重要さを再確認いたしました。

最終的に開業に致しましたが、訪問診療では、多岐にわたる疾患や、社会的に複雑に要因が絡む例など総合的に判断して対処してまいりました。まさしく、総合診療科における経験は、今まで指導いただいた恩師との経験診療に体現したものと思います。訪問診療で肺炎と診断しても、患者さんが点滴加療を希望されない場合があります。その場合、内服で対応するなど、患者さんやご家族の希望に応じた対応を話し合います。

患者さんが置かれた環境や生活習慣などの背景も含めて診察するため、予防医学、生活指導など多岐に及ぶこともあります。地域の皆さんにとっては、医療の最初の窓口となる総合診療科・・・こうした姿勢はその後の私の軸となり、それは今でも続いております。

当院の外来では一般内科のほか、皮膚科や外科、泌尿器科、肛門外科も扱いますし、専門的治療が必要であれば、基幹病院や特定機能病院におつなぎいたします。ですから「何かおかしいな」と感じたら、ご遠慮なくご相談に来てください。

医療だけでなく、人の生活全体をサポートできる場所に

訪問診療に関わるようになってからは、より多くの診療科にまたがる課題に向き合うようになり、専門性を深めるよりも、広く柔軟に対応することが大切だと感じるようになりました。地域の中で、どの診療科に行けばいいのか、どうすれば安心して生活できるのかといったアドバイスができる存在でありたいと思うようになったのです。訪問診療の現場では、患者さんの医療以外の側面にも配慮が必要になってきます。それは介護の問題や生活環境の問題、社会的孤立の問題などに多岐におよび、医師だけで対応できるものではありません。たとえば認知症の方が薬をうまく管理できないケースや、ベッドの裏に薬を落としてしまうといったことは、日常的に起こるものですし、きちんと解決を図らないことには、治療そのものが立ち行かなくなってしまいます。

さらに、治療を終えて健康を回復したからといって、患者さんが幸せになれるとは限りません。病気を治す以上に医師が考えるべきことは「その人にとって何がいちばん大事か」を見極め、そのためのオーダーメードの医療を提供していくこと、そういう考え方に、私は自然とシフトしていきました。

そうした医療を実現するためには、医師だけでは不十分で、ケアマネージャー、薬剤師、介護士、看護師、理学療法士、歯科医師、栄養士などを交えたチームで対応していかなくてはなりません。また地域や行政とのつながりも大事であり、自治体の高齢福祉課、社会福祉協議会、権利擁護センター、地域包括支援センターなど介護申請や行政手続きにおいて総合的な相談に対応できる体制も必要です。治療チームだけでなく、患者さんをとりまく生活全体を幅広くサポートすることができる場所にしていきたいと思っています。

自分と家族の最期を、どのように捉えるべきか

家族の看取りに関しても、意識の大きな変化を感じています。昭和の時代は家族が自宅で高齢者を看取るのが一般的でした。しかし現在、統計上では病院や施設で亡くなる方が多くなっております。その結果、最期の迎え方が見えづらいものになりつつあるようです。

大切な人の最期を迎えるご家族に、どのような手助けができるのか。こうしたことを考える「グリーフケア」の会に参加し、終末期や死生観について話し合い、経験を踏まえたお話をしております。

また一般の方々の間には、医療と死にまつわる誤解も多いと感じています。たとえば「人工呼吸器をつけたら人生は終わり」とか「胃瘻をしたらもう長くはない」といったものです。

こうした誤解を払拭し、医療の現実を正しく伝えていくことも、私の役割だと思っています。

格差を超えて、正しい情報を広く届けるために

現在の日本には、医療サービスを十分に受けられない高齢者が700万人も存在しますが、実際には全ての人が受診できておりません。これは個人の経済格差や医療サービスの地域格差なども関係しますが、健康に対する個人の意識差も大きいと感じています。ある程度の年齢になれば、人の心身機能は徐々に衰えていきます。近年の長寿大国として名を連ねているわが国は、健康な高齢者が多くなり、ネットでの情報社会隣以前よりも簡単に情報が得られる現在においても、高齢者の全員が、健康意識が高いかといえば、決してそうではありません。そのような健康意識の低い人たちにどう情報を届けるか・・・これが今の私の大きな課題です。

そのためのアウトリーチとして、地域のグリーフケア、老人ホームや公民館で開催している「くらしの保健室」で講演をさせていただいています。講演の内容に関しては地域のグループのご希望に応じておりますので、疾病の話、スキンケア、健康談話や防災・医療救護場など多岐に渡ります。こうした機会をとらえての啓発活動は、医療が必要になる前段階で関心を高めてもらうためにとても有用です。講演を終えた後、地域のみなさんに喜んでいただくことが多く、とても嬉しいです。これからも、様々な形で情報発信を続けていきたいと思います。

失敗をも糧として、仁の心を忘れずに生きてほしい

当院では日本人スタッフだけでなく、外国人スタッフも働いております。基本姿勢は「何でもやってみなさい。失敗してもそれが糧になる」ですが、失敗したら気持ちが落ち込んでしまう人もいるので、スタッフ全員に同じ指導を行うことは難しいですね。単純な事務作業が好きな人もいれば、外にどんどん出て、他の職種の方と交流することで活躍できる人もいます。日本人スタッフだと我慢してしまう問題も、外国人スタッフだと不満をガンガンぶつけてきます。こういう時に、何に対して不満なのかヒアリングをし、スタッフ全員で解決していくようにしています。

最近、患者さんに「医院の外国人スタッフにすごく暖かい言葉をかけていただきました。この一言で、暖かい気持ちになりました。本当にありがとうございます。」と感謝の気持ちを述べられました。さらに「最近は日本人で、言葉は通じても、機械的な会話のみになってしまい、こういう暖かいやりとりはほとんどなくなってしまった。」とも言われました。

どんなに世の中が移り変わっても、人が社会の中で生きている以上、そこには相手を思いやり、人に寄り添う「仁」の精神が欠かせません。私自身もその姿勢を大切にしながら、これからも人に寄り添う医療を続けていきたいと思っています。

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高山医院
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宮内 弘子(Miyauchi Hiroko)
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