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隠れ冷え性とは何か
──気づかぬうちに進行する“見えない不調”
Image by Vitaly Gariev

気づかぬうちに進行する“見えない不調”

「手足は冷たくないのに、なぜか体がだるい」「寝ても疲れが取れない」「なんとなく調子が悪い」──こうした不調を感じているにもかかわらず、明確な原因が分からないケースは少なくありません。その背景にある可能性の一つが、“隠れ冷え性”です。一般的に冷え性というと、手足の冷たさを自覚する状態を指します。しかし近年では、表面上は冷えを感じていないにもかかわらず、体の深部が冷えている「隠れ冷え性」が注目されています。これは単なる体質の問題ではなく、生活習慣や現代的な環境要因が複雑に関与する“機能的な不調”とも言える状態です。

深部体温の低下がもたらす影響

人の体は、外部環境に関係なく一定の体温を維持するよう調整されています。特に重要なのが「深部体温(内臓や脳の温度)」です。この深部体温が低下すると、代謝や免疫機能、自律神経の働きに影響を及ぼします。隠れ冷え性では、手足などの末端は温かく感じていても、内臓周辺の血流が低下し、結果として深部体温が下がっているケースが見られます。これは、血液循環の偏りや自律神経の乱れによって引き起こされると考えられています。

なぜ現代人に増えているのか

隠れ冷え性が増加している背景には、現代特有の生活習慣があります。まず一つは、運動不足です。筋肉は熱を生み出す重要な器官であり、筋肉量が低下すると体温維持能力も落ちます。特にデスクワーク中心の生活では、下半身の血流が滞りやすくなります。次に、空調環境の影響です。夏場の冷房や冬場の暖房により、外気との温度差が大きくなることで、自律神経が過剰に働き、体温調節機能が乱れやすくなります。さらに、ストレスも無視できません。慢性的なストレスは交感神経を優位にし、血管を収縮させることで血流を低下させます。その結果、内臓への血流が不足し、深部体温の低下につながります。

見逃されやすい症状

隠れ冷え性は自覚しにくいため、症状も「なんとなく不調」として見過ごされがちです。代表的なサインとしては以下が挙げられます。

・慢性的な疲労感
・肩こりや頭痛
・睡眠の質の低下
・胃腸の不調(便秘・下痢)
・むくみやすさ
・集中力の低下

これらは一見、冷えとは無関係に思えるかもしれません。しかし実際には、体の深部の冷えが原因で血流や神経バランスが乱れている可能性があります。

Image by Sasun Bughdaryan

改善のための実践的アプローチ

では、隠れ冷え性はどのように改善できるのでしょうか。重要なのは「血流」と「自律神経」のバランスを整えることです。

まず基本となるのは運動です。特に下半身の筋肉を使うウォーキングやスクワットは、血流改善に効果的です。筋肉量を維持・増加させることで、体温を生み出す力も高まります。

次に、入浴習慣の見直しです。シャワーだけで済ませるのではなく、ぬるめのお湯(38〜40度)にゆっくり浸かることで、副交感神経が優位になり、血流が改善されます。

食事も重要な要素です。極端なダイエットや偏った食生活は、エネルギー不足を招き、体温低下の原因となります。タンパク質や鉄分、ビタミンをバランスよく摂取することが求められます。

さらに、日常生活における「冷え対策」も欠かせません。特に首・手首・足首といった“血管が表層に近い部位”を温めることで、効率よく全身の血流を改善できます。

医療法人幾嶋医院

幾嶋泰郎

1955年、福岡県出身。1980年に川崎医科大学を卒業後、2年間外科で研修。福岡大学産婦人科、久留米大学産婦人科で研修後、1999年に父の診療所を継承。開業後に漢方薬を使い始め、著効する症例を経験した。福岡医師漢方研究会所属。自ら球脊髄性筋萎縮という難病となり、車椅子で診療を続けている。

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