Doctor's
1992年、慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。1999年、山梨医科大学医学部医学科卒。東京女子医科大学消化器外科に入局、のち同科助教。東京都保健医療公社(当時)にて、荏原病院外科主事、多摩南部地域病院外科医長、同内視鏡科医長を歴任。2020年医療法人杉原クリニック理事長・院長に就任。2023年医療法人慶承会を設立。工学士、医学博士。
私は、高校二年まで地元山口の徳山高専で、情報電子の勉強をしていましたが、大学進学のため、高専を中退し、大学入学資格検定を取得し、大学受験をしました。もともと医学部志望でしたが、合格には至らず、たまたまご縁のあった慶應義塾大学理工学部に入学し、波動工学を専攻しました。しかし卒業後は、医学部を諦めきれずに、山梨医科大学に入り直し、卒業後、当時、膵臓がんの手術件数日本一の東京女子医科大学消化器外科に入局しました。
多くの医師とは違って回り道をし、それだけ時間もかかりましたが、理学や工学の知識がベースにあることで、一般的な医師とは異なった視点を持てたと感じています。たとえば現代の医学は、基本的に「目に見えるもの」を対象にします。検出できない、発見できないものは「無いもの」として扱う。ですが、それでは遅いのです。がんなどは、その最たるものでしょう。たとえ各種の検査で検出限界以下であったとしても、それは「がん細胞が存在しない」ことの証明にはなりません。直径一ミリ程度という小さな組織の中には、実に百万個を超えるがん細胞が生存しているのです。
一方で物理学や波動の世界では、目に見えないエネルギーさえも「実存するもの」として捉え、その機能や影響について考察を繰り返します。その視点を持って医療にあたれば、わずかな可能性を追求することで、疾病の早期発見ができ、早期治療につなげられます。こうした姿勢は、次世代の医療において不可欠のものだと考えています。
東京女子医大時代は、膵臓がんを専門に手術を担当していましたが、関連病院では、がんの標準治療である三大療法(手術、薬物療法、放射線治療)に加えて、免疫治療や温熱治療を行ってきました。開業してからは、他のドクターがあまり注目してこなかった波動などのエネルギー医学以外に、CT、MRIに検出できない一ミリ未満の大きさのがん、つまり「目に見えない病変」をいかに検知するか、治療するかという部分を追究してきました。
その一例が「ドッグラボ」と呼ばれる、犬の嗅覚を用いたがんのスクリーニング検査です。盲導犬などで活躍するラブラドールレトリバーに特殊な訓練を施すことで、人の呼気からがんが放つ固有の匂いを察知できるようになるのです。機械では見落としかねないがんの再発やステージ0のがんにも反応しますし、白血病のような血液のがんも発見でき、100%近い的中率を備えています。がんの部位を特定できないという難点はありますが、見えない病変にアプローチできる、画期的な方法といえます。
そして現在のがん治療において、私が最も注力しているのが、がん細胞を兵糧攻めにする「がん免疫栄養ケトン食療法」です。
ケトン食療法とは、食事療法の一種です。糖質をできるだけ制限し、脂質を多く摂ることが大きな特徴です。私たちの体は糖質からエネルギーを生成していますが、それはがん細胞にとっても栄養源となってしまいます。そこで糖質の代わりに脂質から作られる「ケトン体」をエネルギー源として使う、というのがこの療法の要点です。
ケトン体は糖質が不足し、体が飢餓状態になった際に、肝臓で脂肪が分解されることで産生されます。このケトン体は糖質の代替エネルギーになるのですが、このエネルギーを正常細胞は利用できますが、がん細胞は使うことができません。つまり糖質からケトン体にエネルギー源を置き換えることで、肉体を維持しつつがん細胞を兵糧攻めにできる、というわけです。
この治療法そのものは目新しいものではないのですが、厳しい食事管理と大量の脂肪分摂取が必要になるため、患者さんにとってはつらいものでした。ですが私のクリニックでは新たに開発したサプリメントを導入しているため、ケトン体の効率的な摂取ができ、多くの患者さんが継続的に治療を受けることができています。
標準治療と並行してケトン食を導入することで、治癒が難しいとされる脳腫瘍でさえも消失した例が、実際にあります。私のクリニックでは、特に大腸がんや乳がんで顕著な成果が得られていますし、半年程度で「寛解」といえるほど改善した方も出てきています。これらの例の一部はドクターケンジラボのホームページにもアップしてありますから、ぜひともご覧いただきたいですね。
ケトン食療法は、もともとてんかん治療に使われてきた実績があります。それをがんに応用している医療機関は少なく、思わしい効果を上げられているところはないようです。ですが私は、二〇一五年一月より前職で、ステージ4のがん患者を対象に、ケトン食の臨床研究を開始し、がん治療におけるケトン食の安全性と有効性を国内外の学会に発表し、世界最高峰の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも採択され、世界的な評価を得ています。現在では、ステージ0「目に見えない癌」に対し、ケトン食を応用しています。
またケトン食療法は認知症にも効果を表します。病気を治癒させることはできないのですが、脳に記録されている記憶を正しく呼び出すことで、「もの忘れ症状」を改善し、生活の質を高めることができるのです。お子さんやお孫さんの名前が思い出せない……といった症状を改善するには、実に有用です。
しかしながら、ケトン食が普及しないのはなぜでしょうか。それは栄養指導の困難さに原因があります。そのため、私はスマホの栄養管理アプリ「カロミル」と提携し、ケトン食療法のAIを組み込んで、がん患者さんの指導を行っています。さらに、私のがん治療の指導アルゴリズムをAIに蓄積させ、AIドクター古川を作ってしまえば、AIアバターによる栄養指導や治療支援ができるようになります。もしも私がいなくなっても、この治療を手がける医師たちがAIに残された私の知見を使い、さらにデータを積み上げていくことができるのです。まさに次世代の医療と呼ぶにふさわしいものではないでしょうか。
現在の日本では、がんも認知症も「怖い病気」と認識されています。告知された瞬間に人生の終わりを実感してしまう患者さんも、決して少なくないでしょう。ですが正しい知識と行動があれば、やみくもに恐れる必要はないのです。
がん免疫栄養ケトン食療法とドックラボを組み合わせれば、「目に見えないがん」を早期に発見でき、それをケトン食で治療できれば、つまり将来、がんは、見える前に発見し、見える前に治療できるようになるのです。たとえ、発見が遅れてステージ4だとしても、標準治療との併用で、がんとの共存はできます。認知症においては、たとえ認知症になっても、ケトン体サプリで、認知症の症状を改善することが期待できるため、がんも認知症も、人間にとって大きな脅威ではなくなるのです。
そうすれば人の一生はもっと豊かで、安心できるものになります。このケトン食が導く次世代の医療を多くの方々と共有すること。そして一人でも多くの方がケトン体のしくみを理解し、信じて治療を受けること。これにより、がん、認知症になっても大丈夫な社会を実現させることができれば、それは医師としての最大の喜びです。