Doctor's
熊本大学医学部卒。糖尿病合併症とミトコンドリア由来活性酸素の関連について医学博士、学長賞を取得。米国アルバート・アインシュタイン医科大学にて糖尿病合併症の機序解明の研究に従事。帰国後は熊本大学病院や救急病院を経て、2025年4月に「さくら通りクリニック」を継承。地域住民の健康寿命延伸に貢献するべく診療を実践する。
私は、医療とは病を治すだけではなく、「その人の人生に寄り添う仕事」だと考えています。もともとそうした考えがあったためか、私は、人が自分らしく生きるための支えとなる医療を目指し、糖尿病や生活習慣病といった、人生の時間軸に寄り添う分野に自然と引き寄せられました。急性期医療の華やかさよりも、患者さんの日常や、小さな変化と向き合い続ける——そんな医療のあり方に、静かな情熱を感じてきました。
糖尿病・代謝内分泌科は、まさに人の一生やライフスタイルに深く関係する領域です。自分と関わる方の暮らしを守る医療でもあると感じたことが、この領域を選ぶ原動力となりました。
医師になってからは、長らく糖尿病・代謝内分泌科の分野で診療にあたってきました。私の母校である熊本大学はこの領域に力を入れていて、指導体制や研究環境が整っていたことが幸いしました。その分、患者さんも多かったために、多くの症例を経験できたことも、今の自分にとって大きくプラスに働いたと思っています。
医師としての臨床面と研究面、それぞれに尊敬する師がおり、その方々から学べたことは私の医師人生においてもかけがえのない財産になったと感じています。臨床の現場では人と真摯に向き合う姿勢、研究の場では探究と挑戦の大切さ。そうした師の背中を追いながら、アルバート・アインシュタイン医科大学での留学機会にも恵まれました。あらためて振り返ると、医師としての歩みは、自分一人で歩んできたわけでは決してなく、周囲の方々との出会いや支えがあったからこそだと痛感しています。
当院そのものも、医局の先輩から譲り受けたものです。それまでは一般内科全般のほか、小児科もカバーしていたのですが、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の患者さんが多かったため、思い切って糖尿病を中心とした生活習慣病専門医院として、再スタートを切ることにしました。
熊本県は糖尿病の罹患率や透析導入率が比較的高く、生活習慣病への対策が重要な地域といえます。とはいえ、当院のある熊本市中央区には糖尿病専門のクリニックや総合病院が複数あり、治療を受けやすく医療機関同士の連携も取りやすい環境が整っています。
糖尿病は初期症状が出にくく、患者さんが病気に気づきにくいという難しさがありますから、初期段階で医師側からいかにアプローチするかがポイントになりますね。ですから私は、その患者さんの家族や友人といった身近なつながりをきっかけに、検査や治療につなげていく。そうした医療の届け方を模索しています。また医療人としては自分の専門を活かし、それ以外の分野は専門の先生にお願いする……という、地域をカバーするチーム医療の視点も大切だと思っています。その結果として、当院の理念である「関わる人と幸せを共有する」医療を提供していきたいですね。
これは私のポリシーなのですが、患者さんに対しては余裕をもって接したいと考えています。時間的にも気持ちの上でも、両方の余裕が必要です。
生活習慣病の治療では、生活の背景まで含めて、患者さんを把握しなくてはなりません。そのためにはじっくり時間をかけて、この人はどんな人物なのかを理解することが重要です。
また医師の側にも、患者さんに寄り添う心の余裕が必要です。患者さんといっても、その病態はさまざまですし、治療によってどんなゴールを目指すのか、それも人によって違います。今、体がどんな状態なのか。どうすれば目指すゴールに向かえるのか。それを医師がしっかり理解し、患者さんにも納得してもらうためにも、十分な時間が必要になるのです。
今後の展望としては、まずは先代から継承した患者さんとの信頼関係の構築が最優先です。ありがたいことに、代替わり後も多くの患者さんが引き続き通院してくださっており、少しずつ信頼関係を築き始めているところです。とはいえ、信頼は一朝一夕で成り立つものではありませんし、患者さんの中には「あの先生はどうも肌に合わない」という方もいるでしょう。そんな時は、はっきりとそうおっしゃっていただきたいな、というのが私の考えです。相性が合わない、ということであれば、私のほうでも他の先生を紹介することができます。とにかく、せっかく続けてきた治療をそこで終わりにしないでいただきたいですね。
もうひとつは、県内でも導入の少ない「エクソソーム関連施術」の普及啓蒙です。これは免疫機能や血管の健康を保つことで抗老化が期待される医療で、美容・健康寿命延伸を目的とした新たな選択肢となりうるものです。現時点では自由診療扱いのため、誰でも気軽に受けられる……というものではありませんが、私自身は大きな可能性を感じており、ご希望の方に施術しています。
このように、当院では患者さんの状態やご希望に合わせたテーラーメイド医療を提供し、単に病気を治すのではなく「人を支える医療」をモットーとして、地域医療に携わっていこうと思っています。
これから社会に出ていく若い方々に伝えたいのは、「医師と患者さんとの間には強い信頼関係が必要だ」ということです。信頼なくして医療は成立しないと、私は思っています。
当然のことですが、医師は専門的な知識や技術を持っています。しかし患者さんはそうではありません。ですから医師は患者さんに対してしばしば「上から目線」になりがちで、それが患者さんを萎縮させ、言いたいことも言いづらい状況を作ってしまいがちです。
だからこそ、医師には相手の立場に立つ共感力や、理解度に応じた配慮が必要です。正論を一方的に伝えるだけでは、患者さんには響きません。人と人とのコミュニケーションを大切にしながら、信頼を築いていく姿勢を持ち続けてほしいと願っています。