
医療法人 幾嶋医院
幾嶋泰郎
医療法人幾嶋医院
柳川市田脇754-3
TEL:0944-73-3411
1955年、福岡県出身。1980年に川崎医科大学を卒業後、2年間外科で研修。福岡大学産婦人科、久留米大学産婦人科で研修後、1999年に父の診療所を継承。開業後に漢方薬を使い始め、著効する症例を経験した。福岡医師漢方研究会所属。自ら球脊髄性筋萎縮という難病となり、車椅子で診療を続けている。
努力しなければ何も始まらない
1980
1980年に川崎医科大学を卒業後、2年間外科で研修。福岡大学産婦人科、久留米大学産婦人科で研修
1999
父の診療所を継承。開業後に漢方薬を使い始め、著効する症例を経験した。福岡医師漢方研究会所属。自ら球脊髄性筋萎縮という難病となり、車椅子で診療を続けている。
2026
現在
医療難民となった患者を救いたい
体に出る病気の症状は、精神的なものが原因のことも多い。幾嶋院長は「漢方は元々心身一如。手相によるエゴグラムを導入することによって、患者が抱えている問題に短時間で寄り添うことができる。例えばびっくりすることを『腰が抜ける』と言ったり、怖がりのことを『腰抜け』と言ったりしますが、実際に驚いたり怖がったりすると腰が痛くなるんです。単に慣用句的なものではなく、腰から下を担当するのは『腎』という臓器で、腰痛は80%が原因不明ですが、実はそういった感情に左右されている」と説く。これまで漢方の五臓理論は難解で、それを自由自在に運用するには、漢方に対する深い理解と気付きが必要だったが、幾嶋院長は「漢方診療に手相による精神分析、エゴグラムを導入することで、西洋医学と東洋医学の双方が互いに気付かなかったことに対して、相補的に理解することが可能になると考えています」と強調する。
現在の医療は、診療科や疾患ごとのマニュアルやガイドラインに沿った治療が行われており、その標準化された治療により、日本全国どこに行ってもある程度同じ治療が受けられる。同じ病気でも個人によって全く違う治療法が効果を発揮することも多い。幾嶋院長は「だからこそ、患者個人に特化した非標準的な治療を施したい」と意気込む。「標準的な医療を受けて治らなかった人に、同じような医療を提供しても治癒しない。だったら、他の先生が絶対にやらないようなことをやる必要があるのではないかと。それが自分にとっては、手相でした。漢方の五臓理論と手相によるエゴグラム。それは、現代医学が目指すものとは逆方向かもしれませんが、難民化した患者を救う唯一の方法だと考えています」と熱く語った。
命の誕生に関われる産婦人科を選択
私は研修医時代から産婦人科医として、いくつかの病院で周産期医療や不妊診療を手がけてきました。その間、学生時代から興味があった法医学にも2年間従事しましたが、「やはり自分には臨床が合っている。それも命の誕生に関わる産婦人科がいい」という思いが強まり、再び産婦人科領域に戻り、体外受精や無痛分娩の経験を重ねて、開業に至りました。
出産は、誰にとっても人生の一大事です。妊婦さん、産まれてくるお子さん、そしてお父さんにとっても、大きなライフイベントです。決して女性だけの問題ではなく、ご家族全体の問題です。
それだけに心配や不安は尽きないのですが、外来診療では時間が許す限り、できるだけていねいに、ご質問、ご要望にお応えできるように努めています。
十分な説明と患者さんの理解は、治療には不可欠のもの
これは当然のことではあるのですが、日々の診療にあたっては、患者さんにしっかりと説明し、納得いただいた上で診療を進めることを大切にしています。
現代では個人で多くの情報に触れることができますから、中には驚くほど多くの知識をお持ちの患者さんもおられます。ですが、その知識が必ずしも正確なものかどうかは分かりませんし、患者さんご自身に合ったものであるとも限りません。
ですから私たち医師が専門家としてしっかりお話しし、信頼関係を築いたうえで治療を進めることが重要だと考えています。
出産は「無事に終わって当たり前」と思われているところがありますが、現場に立つ医師としては、常に緊張の連続です。分娩時に赤ちゃんが泣かない、母体の出血が多いなど、予想外の場面に直面することもありますが、何があっても冷静に対応し、安全を最優先することを心がけています。ですから母子ともに健康で、無事に出産を終えた時には、嬉しさよりもまず安堵の気持ちを感じますね。
スタッフ全員が助産師で無痛分娩にも注力
当院の特徴の一つは、スタッフが全員助産師であるということです。すべての看護スタッフが、妊娠中から分娩、その後の育児や授乳について専門的知識を持っており、いつでも対応できるのが強みです。
当院では、夜間は基本的に助産師二人体制で対応していますから、予想外のアクシデントが起こった際にも、的確に対応できる安心感につながると思います。また分娩進行中の妊婦さんが多い場合でも、特定のスタッフに負荷が集中することがなくなり、結果としてこれが妊婦さんへの安全につながります。
もうひとつの大きな特徴としては、自然分娩はもちろん、無痛分娩にも積極的に取り組んでいるという点です。
私が二〇一六年にクリニックを開業してから、これまでの約十年で千三百例以上の無痛分娩を行ってきました。開業当初は全体の二~三割程度でしたが、今では六割近くの妊婦さんが無痛分娩を選ばれています。
無痛分娩は分娩時の痛みをできるだけ軽減することで、落ち着いて出産できるというメリットがありますし、産後の体力回復にも効果的です。初産の方にとっては、痛みに対する恐怖も大きいでしょうから、こうした選択肢があることが心理的な支えにもなります。
また当院と同じビル内には小児科も併設され院長は新生児を専門としています。経営的には別のクリニックですが、院長と私が昔からの知り合いだったことから、自然な流れで「なら、同じ場所でやろう」ということになりました。妊娠から出産、そして育児まで、同じ建物内で完結できるというのは、患者さんにとっても利便性が高いく安心にもつながることと思います。
社会的課題に、医療現場で何ができるか
日本全体で進行している少子化を食い止めることは、容易なことではありません。行政と民間が知恵を出し合い、さまざまな方策を打っていくことが求められています。
その中で、一人の産婦人科医としてできることは限られているかもしれませんが、妊娠・出産に対するネガティブなイメージを払拭して、出産に前向きになれる環境を整えることが私たちの使命です。それには「安全で安心、快適なお産ができる環境」を提供すること、さらに産後も含めたトータルなサポートをすることが重要だと考えています。
産後の悩みについて多く見られるのは、やはり授乳です。授乳の時に痛みを感じたり、乳腺炎などで胸が張ってしまったり……。こうなると授乳そのものがストレスになってしまいます。当院ではそうした悩みを持つ方には、当院で出産したかどうかにかかわらず、できるだけ相談に乗り、必要なケアを行うようにしています。
もうひとつとても大事なことは、産後のお母さんのメンタルです。初産婦さんのみならず経産婦さんにとっても、何年も続く育児というのは、大きな喜びであるとともに出産とはまた違った大きな仕事になります。不安や心配は尽きないでしょう。そのため産後うつになってしまうこともあり、こうしたケースに対しては、精神科や心療内科など専門機関との連携も視野に入れ、対応していく必要があるでしょう。
安心して出産に臨める環境を作りたい
将来的な展望としては、特別な大きな変化は求めていず、オーソドックスな医療を安全重視で提供していきたいと思っています。ただ現在準備しているのは、出産後の退院日を数日延長して、しっかりと身体を休めてもらい、心配ごとや不安なことがあれば相談を受けて対応する、という取り組みです。出産直後のお母さんは、まだ心身ともに不安定です。いきなり日常生活に戻るのではなく、ほんの数日でも落ち着ける時間を設けたらどうかという試みです。
あくまでも「ベッドに空きがあれば」ということになってしまうのですが、不安を抱えたまませわしなく退院するよりも、少しでも安心して心身ともに整えた状態でお帰りいただくことが大切でしょう。小さな取り組みではありますが、それが大きな安心につながってくれたらと思います。
将来的には、当院で出産された方々やそのお子さんとの「同窓会」のような場を設けたいですね。ネット上には洪水のように情報があふれている時代ですが、実際に体験した方の生の声ほど心強いものはありません。大いに参考にできるでしょう。
また、そうした交流の場があれば、「悩んでいるのは自分だけではないんだ」という安心感が生まれますし、育児の不安もストレスも、その場で吐き出してしまえば、それだけで心が軽くなります。医師や、助産師が同席すれば、専門的なアドバイスができ、私たち医療人にとっては、お母さん方が何に悩み、困っているのかを知ることもできます。
日々の忙しさにかまけてなかなか形にできていませんが、何とか道筋をつけていきたいと思っています。
現代は少子化の流れがどんどん強まっていく時代ですが、一人でも多くの子供が当院から巣立って行ってくれることが何にも変えがたい大きな喜びです。